紀の国や花の窟にひく縄のなかき世絶えぬ里の神わざ(宣長)「花の窟の掛け縄」
     
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     もうひとつの霧箱 「花の窟の掛け縄」

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    掛けわたされた一本の荒縄。
    それはそのまま世界現出の装置である。
    この荒縄を地軸として、その周縁に
    無辺で無窮の場が生れ、
    そこにおいて海と山が成り

    
それに続く連鎖世界が達成される
   
      
    

 

  三熊野の御浜によする夕浪は  花のいはやのこれ白木綿(しらゆふ)   西行



  紀の国や花の窟にひく縄の  なかき世絶えぬ里の神わざ    宣長





  み熊野の浦の浜木綿百重なすこころは思へど直に逢はぬかも   人麻呂


 

日本最古の神社といわれている花窟神社では年二回の例大祭「御綱掛け神事」が、太古の昔から行われている。日本一長い170メートルの大綱を岩窟上45メートルの高さから境内南隅の松へ架けわたす。
ジブンが弟の義嗣を連れて、この地を訪れたのが約十五年前。熊野灘で現代美術のフィールドワーク途上であった。ふと、振り返ると「後ろの正面」に花の窟神社があり、そこに掛け発見した。たいへんに驚いた。補陀落の波打ち際に仕掛けていたジブンの美術と、掛け神事のその規模と内容もコンセプトも同じであった。それまで欧米美術の動向は意識していても日本のとくに神社様式を意識することはほとんどなかったから。「なんだこれは、李や菅、関根と同レベルのまたそれ以上のアバンギャルドな現代美術そのものではないか」というそこでであった驚きはたいへんに新鮮なものであった

      


  近代自然科学の対象となる放射性物質。
  エネルギーの一形態である
  そんな物質のよく知られた
  検出装置のひとつに霧箱がある。
 

  この物理装置「霧箱」にたいし、
  独自の座標を備え「物」をありの
  ままの位置と姿で検出できる「霧箱」
  ならぬもうひとつの装置がある。
 

  その構造は無限大の「物」を収めるために
  裏返しにした箱のイメージだ。うら側がお
  もて側となることで、きわめつくせない
  「物」の世界にあって、どれほど遠くの物
  でも、またどれほど過去や未来の物であ
  ろうとも、共時的に共生を可能とする。
 

  この構造体の実体化したひとつの例が
  「花の窟の掛け縄」だ。内部構造に「霧
  箱」のような空間や時間という抽象座標
  軸を含まず「掛け縄」それ自体がそのま
  までこの箱の座標軸として、その周縁に
  古来かわらない熊野の海を生み、山や林
  をあるがまま繰返し輝かせて定めている。


  「反霧箱」としての「花の窟の掛け縄」
  において検出される「もののチカラ」は
  決して対象化された物質のものではな
  い。それは、常にエネルギーや質量に
  換算不可能な初源的なるもの。不定
  形で分節化未然の「物」にもともとみな
  ぎり備わっている測り知れない底から
  湧き出してくるチカラである。そのまま
  では、わたくしたちには制御できないが、
  たった一本の荒縄にあってこそ惹きだ
  され活かされてくるチカラである。

  この一本の荒縄という装置は時代が定
  義したジャンルを超え、そのままいまも
  どんな芸術思想をも凌駕し現代に屹立し
  ている。それがわたくしたち固有のフィ
  ジックス世界とメタ世界の座標軸と成り、
  その座標上に物とおもひが、繰り返し
  生まれだしてくる。抽象座標上の現象
  とは似て非なるものとして・・・。

 







  哥座 美学研究所
  2011年5月8日未明
       長谷川 有  
    E-mail :YU HASEGAWA


 



   
     
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